【 所得と喫煙:統計の解釈 】
知恵袋の「喫煙マナー・カテ」で、時々見かける
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命題A:低所得者ほど、喫煙率が高い
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という命題について話をします。
〖 データ・ソース 〗
その命題の根拠になっているのは、厚生労働省が発表した
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E1:
H30年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000688863.pdf
E2:
第3部 生活習慣調査の結果.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000615345.pdf
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ですね。
この「E2」に記載された
『第89表 世帯の年間収入別,生活習慣等-生活習慣等,世帯の年間収入,
年齢と世帯員数で調整した多変量解析結果-男性・女性,20 歳以上』
(以降「第89表」という)に、出典を加筆し、色塗りなどを施した図を以下に示します。
(以降「第89表・改」という。 この表はクリックすると拡大表示されます)

この「第89表・改」の中で、緑色の帯を施している部分が、
男性の世帯年収別の喫煙関連のデータとなります。
ここでは『男性の喫煙』にスポットを当てて
オラッちの意見を述べます。
〖 検証 〗
この「第89表・改」の男性部分、
つまり緑色の帯を施している部分だけを抜粋した表を、
以下に示します。(以降「第89表・抜粋」という)
世帯年収 | 喫煙者数 | 喫煙率 | 世帯数 |
---|---|---|---|
① 200万未満 | 337 | 34.3 % | 617 |
② 200~400万未満 | 810 | 32.9 % | 917 |
③ 400~600万未満 | 613 | 29.4 % | 580 |
④ 600万以上 | 925 | 27.3 % | 799 |
「第89表・抜粋」を見て、何か ❛違和感❜ を感じませんか?
そうです、喫煙率を算出する際の「分母」が
明確ではないことなのです。
世帯数は記載があっても、世帯人員が不明なのです。
一応、この表には
……………………………………
注1)推定値は、年齢階級
(20-39 歳,40-59 歳,60-69 歳,70 歳以上の4区分)と
世帯員数(1人,2人,3人,4人,5人以上世帯の5区分)での調整値。
割合に関する項目は直接法、
平均値に関する項目は共分散分析を用いて算出。
……………………………………
という「注」は付いていますが、
実際 ❝喫煙率❞ に関しては、分母が不明確であり、
また、「割合」なのか「平均値」なのかも不明ですね!
次に、
この表は『世帯の年収』が基礎資料となっています。
(但し、この年収が、税引き前なのか否かは明確に示されていません)
つまり、例えば、年収360万の単身世帯と
年収720万で4人世帯があった場合、
❝一人当たりの年収❞ では、どちらが
余裕があるのでしょうか?
という話なのです。
一応、(注1)では、「世帯員数(5区分)での調整値」と
ありますが、「どのように調整したのか」は不明です。
しかし、上記の例で言うと「年収360万の一人世帯」の方が
余裕があることは確かではないでしょうか?
持ち家(住宅ローン/固定資産税あり)と、安い賃貸住宅では
当然「住居費」も異なりますが、それは置いても、
子供が多ければ、養育費、教育費、その他の出費が多く
年収720万でも、子供が二人おれば、それ程余裕はない、
と考えられます。
参考までに、厚生労働省発表の
「2019年(令和元年)国民生活基礎調査の概況」から抜粋した
『所得金額階級別世帯数の相対度数分布』を、以下に示します。
(以降 「参考図」 という)

こうした ❝実情❞ を踏まえずに、単純な
世帯収入で判断するのは、聊か拙速の感を免れません。
さらに、この統計の妥当性に関してですが
「スタージェスの公式( 適正階級数 )」に関し、
❝適正な階級数❞ が担保されていません。
スタージェスの公式(※1)によれば、
同調査の実質的な標本数は、調査実施世帯数 2,913
なので、1 + log₂ 2913 ≒ 12 が適正な階級数となるのです。
それを、たったの4階級と言う、⅓ 程度の階級数では
正しい統計解析とは言えないのです。
上の参考図では、階級は年収100万単位で調査しています。
同じ厚生労働省なのに、この「第89表」の階級は、僅か4階級となっています。
何か意図的なものを感じるのは、穿った見方なのでしょうか?
(※1)スタージェスの公式
n をサンプルサイズ、k を階級数とすると、計算式は
下記の様に示されている。
k = 1 + log₂ n
〖 結論 〗
従って、この厚生労働省の発表を鵜呑みにするのは
実に滑稽であり「愚の骨頂」と評されても仕方が無いのです。
では、では。
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