【 続:英国人医師に対する大規模コホート調査について 】
まず、オラッちの過去のブログ
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【 英国人医師に対する大規模コホート調査について 】
http://no-one-knows.jp/blog-entry-76.html
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これを「元ブログ」と言います。
元ブログへのリンクを示した、知恵袋でのオラッちの質問
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【 喫煙者と非喫煙者:英国での大規模コホート調査について 】
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10255392915
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そこで、ある回答者の方から、以下の様な疑義を頂きました。
『でも実際喫煙者の方が早死にしてるんでしょ?』と・・・
そこで、ここでは元ブログに引用した
――――――――――――――
〖 論文② 〗に掲載された Fig.3 (右図)
――――――――――――――
について、少し追記することにしました。
以下は、〖 論文② 〗に対する、オラッちの疑問点/指摘点です。
( [] 内は原文のまま)
Ⅰ・被験者総数
[Participants 34 439 male British doctors.]
となっていますが、喫煙者と非喫煙者の内訳が
明記されていません。
手掛かりとなるのは
[only 17% were lifelong non-smokers]
という事で、
被験者数数 34,439
喫煙者数 28,584(83%)
非喫煙者数 5,855(17%)
だと推測します。
つまりは、喫煙者が、約5倍なのです。
これを以てしても「正しいコホート調査」とは
言えないと認識すると共に、正確な数字を明記しない論文は
信用に値しないと断言できます。
なぜなら、
二つの群(喫煙者群と非喫煙者群)の
母数(統計学での意味ではなく、分母の数値)が
斯様に異なることは「ランダム化 臨床試験」における原則である
……………………………………
ランダム化臨床試験では試験介入群と
コントロール介入群の試験参加者数を同数とする
……………………………………
に、完全に反しているからなのです。
コホート調査と雖も、この原則は
正しい傾向を導出する為には、重要な原則であると考えます。
Ⅱ.Fig.3 の根拠テーブル
それは、
[Table 5 Overall mortality among never smokers, ex-smokers,
and continuing cigarette smokers in relation to stopping smoking
at ages 35-64 (men born 1900-1930 and observed during 1951-2001)]
という[Table.5]です。
以下に画像として抜粋します。

このテーブルから、どのようにして [Fig.3 Percentage survival from age 35] を
作成(プロット)したのか、オラッちでは、理解できません。
(分かる方は、ご教示下さい)
同じ「(死亡年齢の)10歳階級」であっても、
[Table.5] は、35-44、45-50、55-64、65-74、75-84 を表にしているのに対し
[Fig.3] では、x軸の年齢は、-0、50、60、70、80、90、100 となっており
プロットのデータ値(生存率)も、x軸の年齢階級で示されている。
これは、明らかに「トリック手法」と言えるでしょう!
Ⅲ.[Table.5]のトリック
この[Table.5]から、単純に導かれるグラフを示します。
それは、10歳年齢階級別の、喫煙者/非喫煙者 毎の
死亡者数のグラフです。下図

このグラフの各プロットの数値は、
単純に[ Table.5] の各年齢階級の、
非喫煙者は、 [Lifelong non-smokers] の、()内の死亡者数で
喫煙者は、[Continuing cigarette smokers] の、()内の死亡者数です。
従って「途中で喫煙を止めた人」は、除外しています。
この[Table.5]の値が正しいとするならば
不思議な事に、「75 - 84 歳」では、
非喫煙者の死亡数の方が多くなっていますね。
Ⅳ.矛盾する記述
既に、この論文の ❝綻び❞ は見えていますが
ここでは、更に、『主張と矛盾した記述』を二つ程、挙げてみます。
和訳は、全てオラッちの意訳です
二つとも
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Over whole 30 year period(Page 6 of 9)
30年の期間についての総括
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という節からの引用です。
Ⅰ.
The results suggest a shift of about
10 years between the overall survival patterns of the continuing
cigarette smokers and the lifelong non-smokers in this particular
generation.
結果は、この特定の世代における、
常習的な喫煙者と生涯の非喫煙者の全体的な生存率パターンで、
およそ10年のシフト(差異)を示します。
That is not to say that all such smokers died about 10
years earlier than they would otherwise have done:
しかし、それ(10年のシフト)は、
すべての常習的喫煙者が、喫煙しなかった場合の寿命より
約10年早く死んだと言うことには、なっていません
「喫煙者は、非喫煙者より10年早く亡くなっている」との主張なのに
「喫煙しなかったら10早く亡くなった・・・という事ではない」
と言っています。
「喫煙しなかった人 = 非喫煙者」なんですから・・・
矛盾した記述だと言えますね。
Ⅱ.
some were not killed by their habit, but about half were, thereby losing on average more than 10 years of non-smoker life expectancy.
幾人かは喫煙習慣によって死亡した訳ではありません。
しかし、およそ半分はそうでした。
故に、平均して非喫煙者寿命より10年以上、短命でした。
Indeed, some of those killed by tobacco
must have lost a few decades of life.
本当に、タバコによって命を奪われる人々の幾人かは、
2、3十年の生命を失ったにちがいありません。
そして、次には
「喫煙者は、天寿よりも 2、3十年早く死亡した」
と、述べています。
も~う、自家撞着も甚だしいですね。
Ⅴ.生存率
生存率とは、例えば、ある調査に於いて
❶ ある集団の被験者総数を n1
❷ ある観察期間を p1
❸ p1 の期間での死亡者数を d1
とした時
p1 の期間での
❻ 生存者数 s1 = ( n1 - d1 )
❹ 生存率 ar1 = s1 ÷ n 1× 100
ですね!
次の観察期間 p2 では、
❶ 被験者総数は n2 = s1
( p2 のスタート時点の生存者は、s1 )
❸ p2 の観察期間での死亡者数を d2
❻ 生存者数 s2 = ( n2 - d2 ) = ( s1 - d2 )
となりますので
❹ p2 の観察期間の生存率 ar2 = s2 ÷ ( s1 - d2 ) × 100
ですね。
そして、[Table.5] から、10歳階級別の生存者と生存率を
表にすると、以下の様になります。

また、これをグラフにすると、下図のようになります。

このように、実は、喫煙者の生存率の方が高い
ことになるのです。
Ⅵ.Fig.3 のグラフの曲線
ここで、〖 論文② 〗に示された図(Fig.3)を再掲します。

この図は、ご覧のように ❝なめらかな曲線❞ でグラフが描かれています。
解析などでグラフを描画する場合の鉄則があります。
それは、プロットの点と点は直線で結ばなければならない、
ということなのです。
でないと、そのグラフは ❝嘘をついている❞ ことになるのです。
人為的に手が加えられている為に・・・
どうしても、全体的に ❝なめらかな曲線❞ にしたければ
x軸(この場合は死亡数を観察する期間の年齢階級)のスパンを
極々小さくしていけば、自然と曲線を描きだすのです。
まとめ
以上、Ⅰ.~ Ⅵ より、本研究は信用に値しない と、言えるのです。
また、「Ⅴ.生存率」の表とグラフより、『実は、喫煙者の方が生存率が高い』、
別の言い方をすると『実は、非喫煙者の方が早死にしている』と結論できます。
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