【 喫煙と呼吸機能 】
最近、喫煙マナー・カテで、以下の様な図が掲示されています。
〖 25歳の時を100% とした肺機能の低下 〗の図(以降、「図1:肺機能の図」)

この図に関しては、かって SOKONOKE さんが、疑義を質問投稿されました。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10233083690
さて、この図に関し、まず日本での校本は下記です。
〖 日本での校本(以降、「校本」)〗
『喫煙問題に関するスライド集』➪ 図:喫煙と呼吸機能(pdf の P.29)
(日本肺癌学会:禁煙推進委員会 作成)
https://www.haigan.gr.jp/uploads/files/photos/436.pdf
そこでは、以下の図が掲示されています(以降、「図2:校本図」)

この「図2:校本図」では、グラフの右側、つまり
『75歳以上の年齢では、どのようになるのか』が明示されていません。
ですので、生涯の非喫煙者が、どの年齢位まで
喫煙者と比較して、長生き(肺機能が働いているのか)
が不明です。
そしてその底本は、BMJ誌に、1977年に掲載された
The natural history of chronic airflow obstruction.
Br Med J 1977; 1
PDF版のURL
https://www.bmj.com/content/bmj/1/6077/1645.full.pdf
です(以降、「原典」)
この原典でも、やはり右側が図示されていません(下図、以降「図3:原典図」)

従って「タバコを吸わない人」の死亡年齢は不明です。
※ 原典の縦軸の FEV₁ とは
努力性呼出の検査において、
呼出を始めてから1秒間に最大に吐き出すことのできる気量を
1秒量(forced expiratory volume;FEV₁)といい、
1秒量が肺活量(vital capacity;VC)の何%になるかを表すのが1秒率です。
この「図3:原典図(Fig.1)」の下部に述べられた説明は以下の通りです。
fig 1-Risks for various men if they smoke:
differences between these lines illustrate effects
that smoking, and stopping smoking, can have on FEV₁ of man
who is liable to develop chronic obstructive lung disease
if he smokes.
† = Death, the underlying cause of which is
irreversible chronic obstructive lung disease,
whether the immediate cause of death is respiratory failure,
pneumonia, cor pulmonate, or aggravation of other heart disease
by respiratory insufficiency.
Although this shows rate of loss of FEV₁
for one particular susceptible smoker, other susceptible smokers
will have different rates of loss,
thus reaching "disability" at different ages.
(オラッち意訳)
様々な男性が喫煙した場合のリスク:
即ちそれは、この図のFEV₁曲線に示されたように
喫煙者と非喫煙者間におけるタバコの影響度を物語っている。
また 彼が喫煙するならば、COPDに罹患しやすい男性の
FEV₁曲線は、このようになる可能性が高いと言える。
図中の † マークは、死亡を表し
直接の死因が呼吸不全(肺炎)であるか否かにかかわらず、
死亡の根本原因は、元に戻らない(不可逆性の)慢性閉塞性肺疾患や
肺炎、肺性心(cor pulmonate:肺の疾患による心臓の右心室肥大)、
あるいは呼吸障害による心臓病の悪化である。
しかしながら、
この曲線は、1人の特定の感受性の高い喫煙者による
FEV₁の損失の率を示すが、他の感受性の高い喫煙者は、
FEV₁の損失については、異なる損失率を示す。
このようなことから、異なる年齢で「障害」が発生する。
また、この図の上部には、以下の様に述べられています。
Results and comment
SMOKING AND LOSS OF FEV₁
The following conclusions are summarised in figs 1 and 2.
Firstly, we found that FEV, declines continuously and smoothly over
an individual's life (fig 1).
We believe that sudden large irreversible falls are very rare,
for the 9190 measurements that we made of the changes in FEV,
between successive six-monthly surveys were
distributed exactly symmetrically about their mean,
with no evidence of any "tail" due to
sudden substantial losses (p 224)
The rate of loss seems to accelerate slightly with aging (p 67).
以下の結論は、図1、2 に集約されている。
第一に、FEV₁が各個人の人生において、
連続的に滑らかに下降曲線を辿ることを、我々は確認しました (fig 1).
FEVの変化を示した9190の標本の測定を、我々が行った範囲では
突然の大きな不可逆性の(FEV₁曲線の)下降は、非常に珍しく、
6ヶ月毎の連続調査の間、標本者達の平均付近に
正確に対称的にプロットされました。
それは、突然の かなり大きな下降を示す
「後続部(※)」の証拠なしでも・・・
※ 調査期間以降の事を意味している
損失の割合は、老化でわずかに加速度的に増えるようです(p 67).
さてここで、この図3:図(Fig.1)に、
(上記で示した)原典で述べられた記述を参考に
❝Tail❞ 部分を補完した図を作成しました(下図の下側の図、以降「図4:補完図」)
その「図4:補完図」と、日本での校本の「図2:校本図」とを
対比した図(以降、「図5:対比図」)を以下に示します。

図5:対比図
さて、この「図5:対比図」から言える事は何でしょうか?
以下に纏めてみました、
① 生涯の非喫煙者であれば、100歳以上まで存命である(緑色の曲線)
喫煙者の死亡年齢は明確に示しているのに対し
生涯の非喫煙者の死亡年齢を明示しない・・・
という図は ❝信頼性に欠ける❞。
② 「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その1)
……………………………………
彼が喫煙するならば、COPDに罹患しやすい男性の
FEV₁曲線は、このようになる可能性が高いと言える。
……………………………………
と述べている様に、あくまで ❝可能性が高い❞ と、主張しているだけで
その可能性に関し喫煙者と比較した時の 95%CI(信頼区間)は記述されていない。
これは ❝非常に曖昧なバイアス的なデータから導かれた図(原典図)❞ と結論できる。
③「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その2)
……………………………………
図中の † マークは、死亡を表し
直接の死因が呼吸不全(肺炎)であるか否かにかかわらず、
死亡の根本原因は、元に戻らない(不可逆性の)慢性閉塞性肺疾患や
肺炎、肺性心(cor pulmonate:肺の疾患による心臓の右心室肥大)、
あるいは呼吸障害による心臓病の悪化である。
……………………………………
というように、死因を ❝決めつけている❞ のは
この種の、タバコの健康への悪影響を示唆している論文に
共通の ❝トリック❞ とも言えるものであろう!
④「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その3)
……………………………………
この曲線は、1人の特定の感受性の高い喫煙者による
FEV₁の損失の率を示すが、他の感受性の高い喫煙者は、
FEV₁の損失については、異なる損失率を示す。
……………………………………
この叙述は「タバコに対する耐性が非常に弱い喫煙者」の
FEV₁曲線を示していることを明確にしている訳で
❝喫煙者の平均的なFEV₁曲線ではない❞ と言える。
⑤「図3:原典図」の上部に述べられた説明(その1)
……………………………………
突然の大きな不可逆性の(FEV₁曲線の)下降は、非常に珍しく、
6ヶ月毎の連続調査の間、標本者達の平均付近に
正確に対称的にプロットされました。
それは、突然の かなり大きな下降を示す
「後続部(※)」の証拠なしでも・・・
……………………………………
と述べられている様に、何故か ❝故意に❞
「後続部」を省略している。
これでは到底 ❝信頼に値しない❞ と言えるであろう。
――――――――――――――
以上の理由(特に ④ と ⑤)から
『このFEV₁曲線の信憑性は薄い』
と結論できるのです。
では、では。
ウータンのブログ


ウータン(03/18)
zom(03/18)
ウータン(03/17)
ウータン(03/17)
ウータン(03/15)