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【 喫煙と呼吸機能 】

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2022.01.14(15:37) 77



【 喫煙と呼吸機能 】
(以下の枠囲い中の英文の訳は、全てオラッちの意訳です)

最近、喫煙マナー・カテで、以下の様な図が掲示されています。

〖 25歳の時を100% とした肺機能の低下 〗の図(以降、「図1:肺機能の図」)

25歳の時を100% とした肺機能の低下の図(知恵袋 掲示版) 図1:肺機能の図


この図に関しては、かって SOKONOKE さんが、疑義を質問投稿されました。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10233083690


さて、この図に関し、まず日本での校本は下記です。

〖 日本での校本(以降、「校本」)〗

『喫煙問題に関するスライド集』➪ 図:喫煙と呼吸機能(pdf の P.29)
(日本肺癌学会:禁煙推進委員会 作成)
https://www.haigan.gr.jp/uploads/files/photos/436.pdf



そこでは、以下の図が掲示されています(以降、「図2:校本図」)
喫煙と呼吸機能(スライド集より 図2:校本図

この「図2:校本図」では、グラフの右側、つまり
『75歳以上の年齢では、どのようになるのか』が明示されていません。

ですので、生涯の非喫煙者が、どの年齢位まで
喫煙者と比較して、長生き(肺機能が働いているのか)
が不明です。


そしてその底本は、BMJ誌に、1977年に掲載された

The natural history of chronic airflow obstruction.
Br Med J 1977; 1

PDF版のURL
https://www.bmj.com/content/bmj/1/6077/1645.full.pdf


です(以降、「原典」)




この原典でも、やはり右側が図示されていません(下図、以降「図3:原典図」)
喫煙と呼吸機能の経年変化(原典) 図3:原典図


従って「タバコを吸わない人」の死亡年齢は不明です。


※ 原典の縦軸の FEV₁ とは

努力性呼出の検査において、
呼出を始めてから1秒間に最大に吐き出すことのできる気量を
1秒量(forced expiratory volume;FEV₁)といい、
1秒量が肺活量(vital capacity;VC)の何%になるかを表すのが1秒率です。


この「図3:原典図(Fig.1)」の下部に述べられた説明は以下の通りです。

fig 1-Risks for various men if they smoke:
differences between these lines illustrate effects
that smoking, and stopping smoking, can have on FEV₁ of man
who is liable to develop chronic obstructive lung disease
if he smokes.

† = Death, the underlying cause of which is
irreversible chronic obstructive lung disease,
whether the immediate cause of death is respiratory failure,
pneumonia, cor pulmonate, or aggravation of other heart disease
by respiratory insufficiency.

Although this shows rate of loss of FEV₁
for one particular susceptible smoker, other susceptible smokers
will have different rates of loss,
thus reaching "disability" at different ages.

(オラッち意訳)
様々な男性が喫煙した場合のリスク:
即ちそれは、この図のFEV₁曲線に示されたように
喫煙者と非喫煙者間におけるタバコの影響度を物語っている。

また 彼が喫煙するならば、COPDに罹患しやすい男性の
FEV₁曲線は、このようになる可能性が高いと言える。

図中の † マークは、死亡を表し
直接の死因が呼吸不全(肺炎)であるか否かにかかわらず、
死亡の根本原因は、元に戻らない(不可逆性の)慢性閉塞性肺疾患や
肺炎、肺性心(cor pulmonate:肺の疾患による心臓の右心室肥大)、
あるいは呼吸障害による心臓病の悪化である。

しかしながら、
この曲線は、1人の特定の感受性の高い喫煙者による
FEV₁の損失の率を示すが、他の感受性の高い喫煙者は、
FEV₁の損失については、異なる損失率を示す。
このようなことから、異なる年齢で「障害」が発生する。



また、この図の上部には、以下の様に述べられています。

Results and comment
SMOKING AND LOSS OF FEV₁

The following conclusions are summarised in figs 1 and 2.

Firstly, we found that FEV, declines continuously and smoothly over
an individual's life (fig 1).

We believe that sudden large irreversible falls are very rare,
for the 9190 measurements that we made of the changes in FEV,

between successive six-monthly surveys were
distributed exactly symmetrically about their mean,
with no evidence of any "tail" due to
sudden substantial losses (p 224)

The rate of loss seems to accelerate slightly with aging (p 67).

以下の結論は、図1、2 に集約されている。

第一に、FEV₁が各個人の人生において、
連続的に滑らかに下降曲線を辿ることを、我々は確認しました (fig 1).

FEVの変化を示した9190の標本の測定を、我々が行った範囲では
突然の大きな不可逆性の(FEV₁曲線の)下降は、非常に珍しく、

6ヶ月毎の連続調査の間、標本者達の平均付近に
正確に対称的にプロットされました。

それは、突然の かなり大きな下降を示す
「後続部(※)」の証拠なしでも・・・

※ 調査期間以降の事を意味している

損失の割合は、老化でわずかに加速度的に増えるようです(p 67).






さてここで、この図3:図(Fig.1)に、
(上記で示した)原典で述べられた記述を参考に
❝Tail❞ 部分を補完した図を作成しました(下図の下側の図、以降「図4:補完図」)

その「図4:補完図」と、日本での校本の「図2:校本図」とを
対比した図(以降、「図5:対比図」)を以下に示します。
喫煙と呼吸機能の経年変化(対比図) 図4:補完図(下側の図)
 図5:対比図





さて、この「図5:対比図」から言える事は何でしょうか?
以下に纏めてみました、

① 生涯の非喫煙者であれば、100歳以上まで存命である(緑色の曲線)

喫煙者の死亡年齢は明確に示しているのに対し
生涯の非喫煙者の死亡年齢を明示しない・・・
という図は ❝信頼性に欠ける❞


② 「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その1

……………………………………
彼が喫煙するならば、COPDに罹患しやすい男性の
FEV₁曲線は、このようになる可能性が高いと言える。
……………………………………

と述べている様に、あくまで ❝可能性が高い❞ と、主張しているだけで
その可能性に関し喫煙者と比較した時の 95%CI(信頼区間)は記述されていない。

これは ❝非常に曖昧なバイアス的なデータから導かれた図(原典図)❞ と結論できる。



③「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その2

……………………………………
図中の † マークは、死亡を表し
直接の死因が呼吸不全(肺炎)であるか否かにかかわらず、
死亡の根本原因は、元に戻らない(不可逆性の)慢性閉塞性肺疾患や
肺炎、肺性心(cor pulmonate:肺の疾患による心臓の右心室肥大)、
あるいは呼吸障害による心臓病の悪化である。
……………………………………

というように、死因を ❝決めつけている❞ のは
この種の、タバコの健康への悪影響を示唆している論文に
共通の ❝トリック❞ とも言えるものであろう!



④「図3:原典図」の下部に述べられた説明(その3

……………………………………
この曲線は、1人の特定の感受性の高い喫煙者による
FEV₁の損失の率を示すが、他の感受性の高い喫煙者は、
FEV₁の損失については、異なる損失率を示す。
……………………………………

この叙述は「タバコに対する耐性が非常に弱い喫煙者」の
FEV₁曲線を示していることを明確にしている訳で
❝喫煙者の平均的なFEV₁曲線ではない❞ と言える。


⑤「図3:原典図」の上部に述べられた説明(その1

……………………………………
突然の大きな不可逆性の(FEV₁曲線の)下降は、非常に珍しく、

6ヶ月毎の連続調査の間、標本者達の平均付近に
正確に対称的にプロットされました。

それは、突然の かなり大きな下降を示す
「後続部(※)」の証拠なしでも・・・
……………………………………

と述べられている様に、何故か ❝故意に❞
「後続部」を省略している。

これでは到底 ❝信頼に値しない❞ と言えるであろう。


――――――――――――――

以上の理由(特に ④ と ⑤)から
『このFEV₁曲線の信憑性は薄い』
と結論できるのです。

では、では。




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【 英国人医師に対する大規模コホート調査について 】

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2022.01.14(11:57) 76



【 英国人医師に対する大規模コホート調査について 】


まず、この論文の原典は、二つ存在します。

〖 論文①:Title 〗

Mortality in relation to smoking: 40 years'
observations on male British doctors.

(オラッち訳)
【 喫煙に関する死亡率:
ㅤㅤ英国の男性医師についての40年の観察 】

BMJ. 1994 Oct 8; 309(6959): 901–911.
doi: 10.1136/bmj.309.6959.901
PMCID: PMC2541142
PMID: 7755693

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2541142/




〖 論文②:Title 〗

Mortality in relation to smoking: 50 years'
observations on male British doctors

BMJ 2004; 328
doi: https://doi.org/10.1136/bmj.38142.554479.AE (Published 24 June 2004)
Cite this as: BMJ 2004;328:1519

https://www.bmj.com/content/328/7455/1519




つまり、1994年に発表された 論文 ① に対し
その10年後の2004年に発表された ② の論文です。
これは、① の追加研究と見なされます。


それぞれの論文の中身を見ていきます。


〖 論文①:Abstract 〗

・・・
SUBJECTS--34,439 British male doctors
who replied to a postal questionnaire in 1951,
of whom 10,000 had died during the first 20 years
and another 10,000 have died during the second 20 years.

(オラッち意訳)
1951年における、34,439名の英国の男性医師(40歳以上)の内
1万名は最初の20年(~1971年)の間に亡くなり
他の1万名は次の20年(~1991年)の間に亡くなった。



と述べていますが、
・死因の詳細
・基礎疾患の有無

などが判然としません。


〖 論文①:Result 〗

・・・
RESULTS--Excess mortality associated with smoking was
about twice as extreme during the second half of the study
as it had been during the first half.

The death rate ratios during 1971-91
(comparing continuing cigarette smokers with life-long non-smokers)
were approximately threefold at ages 45-64 and
twofold at ages 65-84.
The excess mortality was chiefly from diseases
that can be caused by smoking.

(オラッち意訳)
結果-
喫煙に関連した過剰な死亡率は、
研究の後半では、前半より極端に多く、2倍であった。

1971年から91年までの死亡率は
(継続的な喫煙者と、生涯の非喫煙者を比較して)
45歳~64歳でおよそ3倍、65歳~84歳でおよそ2倍である。
この過剰な死亡(要因)は、
主に喫煙が原因の疾病に拠るものであった。



とあり、要は
『喫煙者の死亡は喫煙が原因』
と、❝決めつけて❞ います。

そこには、被験者の
・個々の健康状態
・基礎疾患の有無
・遺伝的要因
ついては述べられていません。

こういった、偏向的な調査であったが故に、
この論文は真の信用に値せず、
喫煙原因の疾病に関する、追跡調査としての
❝古典的な教科書たる地位❞ を
得られなかった訳なのです。



〖 論文②:Result 〗

Results The excess mortality associated with
smoking chiefly involved vascular, neoplastic, and
respiratory diseases that can be caused by smoking.

(オラッち意訳)
結果 - 喫煙に関連した極端な死亡率は、
主に喫煙に起因するとされる、
血管系、腫瘍性、呼吸器系の疾患に起因する。




ここでは、血管系、腫瘍性、呼吸器系の疾患は
喫煙が原因だと断定し、
故に喫煙者の死亡率は高いと主張しています。


〖 論文②:Conclusion 〗

Conclusion A substantial progressive decrease in the mortality rates
among non-smokers over the past half century
(due to prevention and improved treatment of disease) has been wholly outweighed,
among cigarette smokers,
by a progressive increase in the smoker ν
non-smoker death rate ratio due to earlier and more intensive use of cigarettes.

(オラッち意訳)
結論 - 過去半世紀にわたり(病気の予防や改善された治療によって)
非喫煙者に見られる当然とも言える斬新的な死亡率の減少は、
喫煙者と比較し、大きく上回った。

それは、若年期からの喫煙や、常習的な重度の喫煙者が
非喫煙者と比較して、その死亡率が累積的な増加を示す事で
見て取れる。




まぁ要は「喫煙者の方が、非喫煙者より早死する」
との主張しかありません。



以下、本論です。

〖 論文② 〗に掲載された図(Fig.3)は、下図の通りです。
50年研究版のFig_3

















そして、ある方が〖 知恵袋 〗で引用した、八戸市の医院のエッセイに掲載された図は以下の通りです。
喫煙者 vs 非喫煙者:35歳からの生存曲線





この 〖 論文② 〗の Fig.3 については、以下の様に説明されています。

Figure.3 averages the findings in 2 for all men born in 1900-1930,
distinguishing between lifelong non-smokers and continuing cigarette smokers.

(Among the latter, the median age when they began smoking was 18,
and at the start of the study their median age was 36
and their mean self reported cigarette consumption was 18 a day.)

The results suggest a shift of about 10 years
between the overall survival patterns of the continuing cigarette smokers
and the lifelong non-smokers in this particular generation.

That is not to say that all such smokers died about 10 years earlier
than they would otherwise have done:
some were not killed by their habit, but about half were,
thereby losing on average more than 10 years of non-smoker life expectancy.

Indeed, some of those killed by tobacco must have lost a few decades of life.

(オラッち意訳)

図3 は、1900-1930年に生まれた全男性について、
一生涯喫煙しなかった者と、継続的なタバコ喫煙者を区分して調査した
2つの平均的な結果である。

( 後者(喫煙者)について、彼らが煙草を吸い始めた年齢の中央値は18でした、
そして、本研究の開始時点で、彼らの年齢の中央値は36でした、
また彼らは、タバコの消費が1日につき18本であると報告していた )

結果は、この特定の世代で継続的なタバコ喫煙者と
生涯の非喫煙者の間の全体的な生存率パターンは、
およそ10年の差異(シフト)を示している。

それは、全てのそのような喫煙者が、
喫煙しなければ、全うしただろう寿命より
およそ10年早く死んだ、と言うことではない:

つまり、幾人かは彼らのその喫煙習慣による死亡という事ではないが
およそ半分はそうであった。
そして、それによって平均して非喫煙者の寿命より
10年以上早く亡くなっている。

実際、タバコによって命を奪われる人々の何人かは、
数十年の生命を失ったに違いない。






つまり、ここでも死因に関する様々な交絡因子の影響は度外視し
『喫煙者の死因 = タバコによる疾患』と決めつけている。
喫煙に関し、最も重要な要因である ❝遺伝子❞ については
全く取り上げられていないのです。

知恵袋では何度も言ってますが、喫煙に関しては
「CYP2A6」という「チトクロムP450系遺伝子」の影響が
非常に重大なのです。

よって、〖 論文② 〗の Fig.3 は信頼に値せず
それ故に、喫煙原因の疾病に関する、追跡調査としての
❝古典的な教科書たる地位❞ を得られなかった訳なのです。

以上!





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